内田 樹 / 『日本辺境論』 / 2009-11 / 新潮新書 / A
わはは、とても乱暴で愉快な「街場の日本論」でした。
帯にある養老孟司の推薦の言葉が「これ以降、私たちの日本人論は、本書抜きでは語られないだろう。」となっています。
著者自ら言うように、本書は学術書ではないため、そういう方面では直接相手にされないでしょうが、「日本は辺境の地だから」という観点は確かに私のアタマの中に刻まれてしまい、今後どんな日本人論を読んだところでまずこの発想と照らしてみるところから自由になれないでしょう。
本書のスタンスは「百花繚乱の日本論・日本人論に共通する何かを、一本の補助線を引くことで浮かび上がらせる」というもの。
「辺境の地、日本。中央に正しいもの優れたものがあり、それをいかに取り込むか」というテーマこそが、卑弥呼の時代から明治になっても昭和になっても、そして平成の時代になっても、ずーっと最大の関心事であり続けた、という。
「中央」は長らく中国(中華)で、明治からは欧米に、太平洋戦争後は米国に変わったけれども、それでも変わらなかったのはこの「目指すべきものは外にある」というスタンス。
ははぁ。なるほど、の連続。
中央と辺境。宗主国と植民地。キャッチアップ。ロールモデル。パラパラと登場するキーワードは、すべてどこかで習ったり読んだりして知っていたものばかり。
そして、著者自身も「この本に書いてあることはすべて先人の指摘したことの言い換えにすぎない」といっている。
それでも、この「補助線」のなんと強力なことか。
数学(算数)で、どうしても分からなかった問題が、一本の補助線によっていきなり解けるようになる快感。一度それを知ってしまうと、もうそれ以外の見方ができなくなってしまうくらい焼き付いてしまう思考の枠。
それを日本人論で味わってみてください。
なんとも強烈(奇妙奇天烈でもある)な話の連続が、目から落ちた鱗に埋もれそうになったり、膝を打ちすぎて骨折しそうになるくらいの楽しさに変わります。
Amazon.co.jp: 『日本辺境論』