2011年02月13日

[書評] 山浦 玄嗣 / 『父さんの宝物』

父さんの宝物 山浦 玄嗣(やまうら はるつぐ) / 『父さんの宝物』 / 2005(2003) / イー・ピックス出版 / A

ケセン語聖書の著者(訳者?)でもある山浦玄嗣のエッセイが一冊の本にまとまったもの。いやはや奇想天外な子育てっぷりが面白かった。

何しろ子供の数は8人。 そして著者は幼くして父親を亡くし、現実の父親を知らないまま、耳学問の理想的な父親像を目指す。 そりゃ大変だ。 一切手を抜かずに、全力で仕事にも家族にも向かっていったんだろうな。

しかし、その父親も一朝一夕にそのような父親になるのではない。父親はみずから父親になるのではなく、子どもによってむりやりに父親にならされるのである。父親は子どもの偉大な師であるが、子どもはじつは父親の生みの親である。(p.3)
これは言われてみるとその通り、ですね。

ケセンとは岩手県の気仙地方のこと。 「ナザレという田舎で育ったイエス様はズーズー弁をしゃべっていたに違いない、訛っていたはずだ」 という信念のもと、共通語ではなく方言で聖書を書き直してびっくり(でも納得)させたのが著者と『セケン語訳新約聖書』。 そしてその聖書が生まれたきっかけが本書に登場する。子どもへの語り聞かせだったという。 仏教の良寛さんではないけれど、子どもにまっすぐ届く(届ける)ために、ごまかしではない分かりやすさを追求したら大人も喜んだっという話し。

タイトルの「宝物」はケセン語で「子ども」という意味だそうで、それもまた暖かい話し。

Amazon.co.jp: 『父さんの宝物』

posted by ほんのしおり at 00:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍・雑誌