2009年03月23日

[書評] 中島 たい子 / 『そろそろくる』

そろそろくる (集英社文庫) 中島 たい子 / 『そろそろくる』 / 2009-02 / 集英社文庫 / B-

本作品はPMS、Premenstrual Syndrome(月経前症候群)に振り回されるアラサー・イラストレータが主人公。

前作『漢方小説』がなかなかよかったので手にとってみたのですが、二つの点でイマイチでした。

一つは、この小説が生理についての小説だからでしょうか。男性である私は今ひとつ実感がわかないというか、小説の世界に浸れないというか、主人公に共感できないまま読み終わってしまったことです。
ただ、優れた小説は(前作『漢方小説』のように)自分の身に起きていないことでも「あぁ、そうかもしれない」と思わせてくれるので、私が男性ということばかりではないように思いますが。

そしてもう一つは、主人公の恋愛がうまくいってしまって、(大げさだけど)余韻みたいなものを少々損なってしまったこと。途中のやきもきしているあたりはとてもよかったんですが。

とはいえ、本作品もウジウジした自意識をこれでもかと描写していて、なかなかエグリのするどい小説でした。

大人になるほど色々なことができるようになるけれど、それを上手くできる人になれるかは、また別だ。リンゴの皮がむけるようになると同時に、リンゴの皮をむくのがヘタな人にもなってしまう。(p.58-59)

これこれ。こういうネガティブ思考を書かせたら中島たい子は一級です。

生理でむしゃくしゃするのも、子宮がついているのも、全部わたし。そいういう気づきと、それを引き受けていこうと少しポジティブになる主人公の再出発。そこは前作『漢方小説』と同じで新鮮さに欠けると言えば欠けるのですが、描写にはぎょっとします。

なんだか女は子宮のために生まれてきているようにさえ思えてくる。私に子宮が付いているというより、子宮に私が付いている、と言った方がよい。(p.146)

恋愛についての心理描写も、途中経過の時点ではなかなかのものです。
灯油を持ってきてくれた彼氏について。

「他に持ってくるもの、思いつかなくて」
彼は呟いた。私は彼の背中におでこをつけた。この人を、もとあった場所に返すことはもうできない。そんなこと、わかっていた。(p.61)

三作目を読みたいかと言われると微妙ですが、独自の世界を築いていることは間違いない中島たい子でした。

Amazon.co.jp: 『そろそろくる (集英社文庫)』

posted by ほんのしおり at 00:44| Comment(1) | TrackBack(0) | 書籍・雑誌
この記事へのコメント
微妙な独自の世界の今後は明るそう。

ただし、今後は伝統的で庶民的な方向、らしい。
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中島たい子さん、『ぐるぐる七福神』という新作が
出てるみたいです。
元々備えている天性の明るさとバランス感覚も
生かして、これからも作品を作ってほしいですね。

それでもダメな三作目、になるかも知れないですけど。
Posted by 心遥 at 2011年10月30日 17:27
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