小川 洋子 / 『ミーナの行進』 / 2009-06 / 中公文庫 / B
ほのぼのうっとり系、たとえば『博士の愛した数式』の系統に連なる作品ですね。
『小指の標本』など、ゾクッと怖い小川洋子とはまったく異なる世界。
どうも小川洋子に関する限り、私は後者は大好きなのですが前者はあまり好きになれないんですね。本書を読んで再認識した次第。
時代はミュンヘンオリンピックの年なので1972年。 家庭の事情からお金持ちの親戚の家に一年間預けられることになった主人公(語り手)。 その家には病気がちで夢見がちな"いとこ"のミーナをはじめ素敵な人たちが住んでいます(人だけではなく、コビトカバ!まで住んでいます)。
ただ、一見なんの不幸も見当たらないようなこの一家にも、実はそれなりの悩みがあるのだ、ということが、うすうすだんだん、分かってきます。
どうやらお父さん(おじさん)は別の女の人と不倫中で家に帰ってこないし、お母さん(おばさん)は「やることがない」という不幸を抱えていてありとあらゆる出版物の誤字脱字を見つけては出版社にお手紙を書く毎日。
外から見ていては、あるいは表面的に見ていては、分からない幸せや不幸せ。
ミーナの持つ豊かさとは、お金ではなく想像力で、その羽ばたきにのせられ私はどれだけ遠く広い世界を見せてもらったのか、と段々気がついていくところ。
バレーボールを見るのとやるのでは大違いと気がつくところ。
このあたりの変化とその喜び悲しみを描いたら、やっぱり小川洋子ならではの細やかさで、とくにかつて少女だった人たちはうっとりできること請け合い。
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