2009年08月17日

[書評] 佐々木 敦 / 『ニッポンの思想』

ニッポンの思想 (講談社新書) 佐々木 敦 / 『ニッポンの思想』 / 2009-07 / 講談社新書 / B

1980年代、90年代、2000年代の日本の現代思想や批評について、それぞれの年代を代表するメンバーを取り上げ、対比させることで分かりやすい地図を描く。
1980年代は浅田彰、中沢新一、蓮實重彦、柄谷行人。1990年代は福田和也、大塚英志、宮台真司。2000年代は東浩紀。

著者(佐々木)は、ニッポンの思想の特徴は「何を言ったかよりどう言ったか(振る舞ったか)」の方が影響力が大きい、という。
本文中ではコンスタンティブとパフォーマティブという言葉を使っているけど、それは「ニコニコ笑いながら馬鹿だねぇお前は、とかーちゃんが言う」とか「お前って本当に頭がいいな、と上司があきれた顔で言う」というシーンを浮かべてもらえばいい。
これは「それを言っちゃおしまい」ではないのかな。1980年代以降であれば、私たちは(それがいかに日常生活と遠い現代思想や批評であったとしても)ほとんどの情報をマスコミ経由で得ているはずなのだから。

とはいえ、そういうスタンスに立つことで、「何を言ったか」に偏りがちな分析を「どう言ったのか」に引き寄せバランスを取った、と思えばいいのかな。
「どう言い合ったのか」は、「どう言い合ったのか」にもつながるので、週刊誌的なあおり・覗き見もまざりつつ、対立点と相補点が浮かび上がって理解しやすくなるのは確か。

2009-08-24追記: そう、本書の特徴であり、長所でも欠点でもあるのはこの「相対的な比較」。1980年代以降のニッポンの思想というコップの中の嵐を取り上げているだけでしかない、とも言える。対世界という広がりもないし対歴史という深みもない。
でも、正しさという物差しを捨てて相互関係にスポットライトを当てたことによるライブ感がある。そこには「わたし」が読者(カンケーない第三者)という立場を離れて自分事(じぶんごと)として引き受けたくなる隙がある。

10年後に再読する意味のある本かと言われると疑問がつくけど、今日読む意味のある本かと言われればあると言える。

Amazon.co.jp: 『ニッポンの思想 (講談社新書)』

posted by ほんのしおり at 00:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍・雑誌
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