斉藤 美奈子 / 『誤読日記』 / 2009-09(2005-07) / 文春文庫 / C+
『週刊朝日』(2000/4/28-2001/12/28)、『週刊AERA』(2002/12/30-2004/9/6)の連載をまとめたもの。
ときどきピリっと辛子のきいた「よっ、さすが美奈子ねえさん!」という記事もあるけど全般的に低調。
思うに、斉藤美奈子の良さというのはあるテーマに従って対象となる作品や作家・分野を集中的に読み込むことによって、それまでとはまったく違う光を当てることにある。
デビュー作の『妊娠小説』がまずそうだったし、私の大絶賛する『モダンガール論―女の子には出世の道が二つある』もそうだし、『読者は踊る』『文章読本さん江』もあれもこれも(少なくとも私の中で評価の高い作品には)そういう傾向がある。
だけど、本書は切れが悪い...
週刊誌の連載だからかもしれない。時事ネタやその時に流行している本に対してコメントするスタイルは、上で挙げた美奈子ねえさんの良さとは逆方向のような気がする(同じAERAでこの後に連載されていた『実録 男性誌探訪』はすごく面白かったから)。
とはいえ、やはりキラリと光る言葉はありまっせ。以下、いくつかご紹介します。
村上龍は「いまもっとも時代を鋭く描く作家」ということになっているのだが、しかし、みんながいう「時代」とは何なのか。もしかしてワイドショー・ジャーナリズムのことなのか。(p.244)
(辻仁成を評して)この作家の通俗性には年々磨きがかかっていく。(p.290)
(『いま、会いにゆきます』を評して)セカチュウ(『世界の中心で愛を叫ぶ』)+テンポン(『天国の本屋さん』)。それを30倍に希釈した村上春樹文体でつづった本といえば、ようすがわかってもらえるだろうか。あと、江原啓之さん的な「スピリチュアル・ワールド」な感じも混ざっているかも。(p.303)
『二十一世紀に希望を持つための読書案内』を見たときにも、やはりというか、またかというか、たじろいだ。反論不能な『正しいこと』がたくさん書かれていたからである。(p.328)
石田衣良の小説に見るべきものがあったのは、『4TEEN』の頃までで、それ以降の作品が生彩を欠くような気がするのはただの錯覚?(p.355)
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