森見 登美彦 / 『新釈 走れメロス 他四篇』 / 2009-10(2007-03) / 祥伝社文庫 / B
いつもの京都を舞台にした臭い青春小説なんだけど、ちょっと違うのは有名な作品へのオマージュとなっているところ。
取り上げられた本歌は『山月記』『薮の中』『走れメロス』『桜の森の満開の下』『百物語』の五編。
裏表紙の紹介文には「誰もが一度は読んでいる名篇を、新世代を代表する大人気作者が、敬意を込めて全く新しく生まれかわらせた、日本一愉快な短編集」とある。
当時の社会的な状況に依存していない作品ばかりなので、舞台を現代に置き換える意味はほとんどないと思う。
それに、「誰もが一度は読んでいる」とは言えないような気がする。
それでも、本書はお勧め。
元の作品という枠があるせいか他の作品よりはハチャメチャ度が低いけど、それだけにいっそう森見の実力が光っている。
惜しむらくは、他の森見作品を読んでいないと(上の文と矛盾するけど)ハチャメチャぶりに目がくらんで文章がえぐっている青春の痛みが見えにくいこと。
文庫解説にこんな言葉が登場する。
青春をこじらせた大学生達が一般社会とうまく交われずにもんどりうつ様を見事に描き出している新進気鋭の作家さんがいるのですが(p.259)わはは。これほど的確な森見登美彦の紹介は初めて聞いたぞ。
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