恩田 陸 / 『蛇行する川のほとり』 / 2010-06(2004-11) / 集英社文庫 / C+
少女がぎりぎり少女である一瞬。
その一夏を、まるでショートムービーのように、ざらっとした画像、丁寧なシナリオ、凝ったカメラワーク、美男美女の俳優で作りあげた作品。
【注意】ネタばれあり。
物語としてはそれなりに上手いしきれいにまとまっています。
つまり、成功しているとは思うのですが、どうも評価できません。
著者あとがきを読むと「少女の美しい一瞬(とき)」を描きたかったということのなのですが、私が読んだのは「容姿の美しい少女の美しい一瞬(とき)」でした。
少女あるいは少年という存在が、容姿と関係なく、純粋さと欲望のはざまで輝く瞬間とか、自分たちの正義が大人の正義によって叩き壊されるまでの間に燃え上がる瞬間とか、そういうものを期待していました。
実際、そういった希望に応えてくれる作品でもあるんですが、どうしても安っぽさ薄っぺらさを感じます。
幼少時代のトラウマを持ち出すところがひとつ(これは痛い、これが出てきたらアウト)。
ここは感動するシーンです、の次の瞬間、虹が現れたりする俗っぽさがひとつ(おまけにその虹は本物ではなくてホースの散水にしておく小ずるさ)。
そして主人公の命を交通事故で終わらせてしまうところ(ガンでないのが救いだけど)。
表紙の絵も、中央公論社(中公文庫)の酒井駒子の絵の方が素敵ですね。
Amazon.co.jp: 『蛇行する川のほとり』