伊勢 幸一, 池邉 智洋, 栗原 由樹, 山下 拓也, 谷口 公一, 井原 郁央 / 『4Gbpsを超えるWebサービス構築術』 / 2009-08 / ソフトバンククリエイティブ / B+
本書を読んでまず驚くのは、驚くようなことがほぼないこと。
タイトルとは裏腹に、実に地味な、珍しくも何ともない技術や知識やスキルについてしか書かれていない。
独自に分散ファイルシステムを作ったとか、少し「おお、そうなのか」という記述もあるけど、ほとんどが「ググれば一発でわかる」ようなソフトウェアや利用方法の組み合わせ。
それをもってこの本には価値がない、という人もいるし、Amazonの書評にもそういう記述が見受けられる。
でも、私はこの本を高く評価したい。
「超絶技巧で綱渡りするのではなく、地道な運用改善の積み重ねでここまでいける」という実例であることの重みはちょっとやそっとでは手に入れることができないから。
「AというソフトウェアにはBという設定項目があり、Cという値を設定することができる」という知識は、もちろん、ググればわかる。マニュアルにも載っている。
でもそれは「サーバ台数が数十台規模を超えると運用が破綻する」とか「高負荷にも耐えられる」とか「Dという別の設定項目と組み合わせても大丈夫」とか「性能限界は高いが、限界に達すると急激に劣化する」とかいったノウハウとはまた違う世界。
本書に書かれているのはすべて「実証ずみ」。これは重い。そして3000円は安い。
「そんなことググればわかる」と言っている人は、そうだなぁ、一冊の小説を手に取って「どの単語も全部辞書に書いてある(だから価値がない)」と言っている人に聞こえる。
Amazon.co.jp: 『4Gbpsを超えるWebサービス構築術』